マウスピース矯正の
種類と違い
マウスピース矯正の種類はひとつではありません。実は矯正用マウスピースの製造メーカーはたくさんあって、国内には約20種類の矯正用マウスピースブランドが流通しています。
このページでは、矯正用マウスピースブランドの種類と違いについて解説していきます。
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矯正用マウスピースは
大きくわけると2種類ある
部分矯正用と全顎矯正用の
2種類のブランドがある
国内で流通する矯正用マウスピースはおおよそ20種類くらいあります。そのマウスピースは大きく2つのグループに分けることができます。「全顎矯正用マウスピース」と「部分矯正用マウスピース」の2グループです。
全顎矯正用マウスピースは、親知らずを除く上下すべての歯を動かすことができるマウスピースです。ごく一部の特異な症例を除きほとんどの不正咬合を矯正することができます。
部分矯正マウスピースは、前歯を中心に上下12本を矯正できるマウスピースです。一部は小臼歯(4番・5番)まで動かせるものもありますが、大臼歯(6番・7番)は動かすことができません。
全顎矯正が可能なブランドは
3種類しかない
何をもって「全顎矯正が可能」と定義するかは難しいところですが、仮にその定義を「それなりに知識と経験がある矯正医なら、おおむね全顎矯正が実現可能なマウスピース」とするならば、全顎矯正が可能なマウスピースは3種類しかありません。インビザライン、クリアコレクト、シュアスマイルの3種類です。
これら3つのマウスピースブランドはいわゆる技術開発が進んだ「先発品」で矯正症例数も多く、全顎矯正の学会発表等も盛んにおこなわれています。
その他のブランドは
部分矯正用マウスピース
その他の矯正用マウスピースブランドはおおよそ「部分矯正しかできないマウスピース」だと思って差し支えありません。
ものすごく知識・経験のある先生なら自前の補助装置を使って全顎矯正できてしまうのかもしれませんが、そういった話はあまり聞きません(そもそもそんなことをする必要もありませんが…)。おそらくは、全顎矯正の症例はほとんどないものと思われます。
部分矯正用マウスピース例
- キレイライン … 12万症例
- hanalove … 3万症例
- oh my teeth … 8000症例
- アソアライナー
- hanaravi
全顎矯正用と部分矯正用の違いは「矯正範囲」だけじゃない!
全顎矯正用マウスピースと部分矯正用マウスピースの違いは「矯正範囲の違い」とよく言われます。ですが実際のところ違いは矯正範囲だけではありません。部分矯正用マウスピースは「様々な性能が劣るために全顎矯正ができない」と考えるほうが正確で、矯正能力には様々な違いがあります。
それでは次の章より「全顎矯正用マウスピース」と「部分矯正用マウスピース」の違いについて解説していきます。(個別マウスピースブランドの性能については自身できちんとお調べすることをお勧めします。)
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矯正補助装置の豊富さ
矯正補助装置とは?
部分矯正ブランドは
アタッチメントしかない
多くの部分矯正用ブランドは、アタッチメントが一種類しかないか、あるいはアタッチメントそのものすらありません。そのため実現できる動きはかなり限られます。
部分矯正ブランドは「押して引っ込めればいいだけの出っ歯」ならキレイに治せるのかもしれません。しかし、前歯に捻じれがが生じている症例や、前歯の高さにバラつきがある症例など、「回転」「挺出」「圧下」「トルク」が必要な歯並びはあまりキレイに治せそうにありません。
全顎矯正ブランドは
矯正補助装置が豊富
一方で全顎矯正ブランドには様々な矯正補助装置があります。アタッチメントは複数あり、他にも歯列幅を広げるための拡大床、圧下を実現するバイトランプ/後部咬合ランプ、より強力な力を生み出す顎間ゴムなど、あらゆる矯正補助装置を使うことができます。そのためより精密な歯牙移動が実現でき、よりキレイに矯正することができます。
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素材が違い
矯正力の持続性が違う
部分矯正ブランドは、
強い矯正力を維持できない
矯正用マウスピースはすべてポリマー素材でできています。
そして部分矯正用マウスピースは(私が知る限り)硬いポリマーか柔らかいポリマーか、どちらかひとつの単層ポリマーでできています。
ブランドによって硬さ/柔らかさは違いますが、硬さの違いによって矯正力と持続性に次のような違いが現れます。
マウスピースの硬さによる
特性の違い
硬いマウスピースは…
装着直後に高い矯正力が得られる。
しかし硬さのために力が一点に集中し、すぐに変形してしまう。装着開始後すぐに矯正力が失われる。
➡矯正力は高いが持続力がない
柔らかいマウスピースは…
柔らかくて変形しにくいため、矯正力を長期間維持できる。でも柔らかいので矯正力そのものが弱い。
➡持続力は高いが矯正力は弱い
このように単層ポリマーの部分矯正用マウスピースは、持続力がないか、矯正力がないか、どちらか一方の弱点を持っています。つまり部分矯正用マウスピースは“強い矯正力を長期間維持する”ことができないのです。
全顎矯正ブランドは
強い矯正力を長期維持できる
インビザラインとクリアコレクトは、マウスピースが多層ポリマーでできています(シュアスマイルは残念ながら単層ポリマーです)。そのため硬さと柔らかさの良いところを併せ持っており、強い矯正力を長期間維持することが可能です。
例えば当院が採用するクリアコレクトは、クリアクォーツという新素材を採用しており、その素材は外側が硬いポリマーで、内側は柔らかいポリマーでできています。
以下のグラフは、三層構造のクリアコレクトと単層ポリマーのマウスピースを比較した実験結果です。
時間経過による矯正力の減衰具合を比較したところ、クリアコレクトのほうが強い矯正力を有意に保持し続けられることがわかっています。(参考:クリアコレクトウェブサイト)
まとめ
強い矯正力を長期間維持できる多層ポリマーマウスピースのほうが、意図した方向にしっかり力を加え続けることができます。それゆえより予測再現性が高い矯正(≒事前のシミュレーションどおりに動く)が実現できるということです。
マウスピースメーカー各社の技術は常に進歩しています。あなたがこのページを読んでいる今日現在で、すでに多層ポリマーになっている部分矯正ブランドもあるかもしれません。
最新の情報はご自身で確かめるようにしてください。
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抜歯矯正の可/不可
抜歯は有効な
スペース確保方法です
不正咬合の理由は(ほとんどの症例が)歯の整列スペース不足です。そのため矯正は、いかにして歯の整列スペースを作るかということがとても重要な課題になってきます。
歯の整列スペースを作る方法はいくつかありますが、なかでも「抜歯」はスペースを大きく確保できる方法で、重度のデコボコ歯の矯正するための重要な選択肢です。
この「抜歯矯正」ができるか否かはマウスピースブランドによって異なります。
部分矯正用マウスピースは
抜歯矯正ができない
部分矯正用マウスピースは抜歯矯正ができません。そのため、たとえ前歯の部分矯正であってもスペースが足らないために治療できないことがあります。
仮にスペースが足らない症例で無理して矯正してしまうと、“前歯が全体的にせり出して出っ歯気味になり、噛み合わせも悪化する”ということが起こりえます。(下図)
格安部分矯正は、しっかりした矯正歯科で受けましょう
「価格が安い部分矯正でいいや」と安易に考えていたりしませんか?その考えはとても危険です。
残念ながら格安マウスピースで治療をおこなう先生のなかには、「上下前歯の位置関係」や「前歯の前後位置」を考慮せず、本来適応外の症例であっても治療してしまう先生もいます。
もしあなたの歯がそれなりにデコボコしているのなら、「部分矯正適応」と診断されても安易に信用せず、矯正歯科学会認定医がいるクリニックで再度診断を受けることをお勧めします。
全顎矯正用マウスピースは
抜歯矯正が可能
全顎矯正用マウスピースのインビザライン、クリアコレクト、シュアスマイルは抜歯矯正が可能です。
そのため(医師の技術にもよりますが)重度のデコボコ歯並びにもしっかり対応できます。
当院はクリアコレクトを採用しています
当院は全顎矯正ブランドの「クリアコレクト」を採用しています。
部分矯正の症例であっても部分矯正ブランドのマウスピースは使わず、すべてクリアコレクトで矯正しています。
当院の部分矯正(クリアコレクト使用)は17.6万円から。質の高い矯正治療を、部分矯正ブランドを使った格安マウスピース矯正と同価格帯で提供しています。部分矯正のことなら当院へご相談ください。
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矯正中ってどんな感じ?
通院はあるの?
マウスピース矯正中は定期的に通院し、診療を受けなければいけません。次のページでは矯正中の通院頻度と診療内容、それからマウスピースの使用方法や過ごし方について解説します。
たとえブランドが公式に補助装置を提供していないからといって、絶対に複雑な移動ができないわけではありません。自前で装置を作ってしまう先生なら、部分矯正用ブランドでも複雑な動きが可能です。(ただ、そういう先生はインビザラインかクリアコレクトを使うと思います。)