いつもはまだ歯科医院をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。
根管治療中の食事についてのお悩みをご相談いただくことがあります。
ご不便をおかけしますがズバリ
「根管治療中の歯では召し上がらないでください。」とご説明しています。
いくつか理由がありますので見ていきましょう。
① 根管内への細菌侵入を防ぐため
根管治療は一般的に1回で終わることは稀ですので治療と治療の間は仮蓋が入ることになります。
専門用語では仮蓋を「仮封」、仮封に用いる材料を仮封材といいます。
仮封の目的は細菌が根管内に入る事を防ぐことですが、仮封剤の厚みが薄いと容易に細菌が侵入してしまいます。
治療中の歯で噛んでしまうと仮封剤がどんどんと削られ薄くなってしまう恐れがあります。
使用する仮封剤によっても違いはありますが仮封剤は最低3-4ミリの厚みがないと細菌侵入の可能性があるとされています。
仮封剤として一般的に使用されている材料は当院でも使用している水硬性セメントです。
水分と混じることで徐々に固まり最終的には石膏のように硬くなります。
完全に硬化するまでは30分程度を要しますので特に治療直後はお食事を取らないようにしてください。
②歯が割れやすいため
根管治療を必要とする歯は虫歯が進行し歯が大きく削られている可能性が高いため歯が薄くなっています。
歯が割れてしまったり、折れてしまうなどのトラブルは歯が薄い場合により多く発生します。
歯が折れてしまいますと折れ方にもよりますが歯の保存が難しくなる場合もあります。
以前は歯の神経を抜くと(根管治療を行うと)枯れ木のようになるため歯が脆く(もろく)なるといわれていましたが、現在は根管治療後も歯質の成分にはほぼ変化がないため歯が脆くなることはないとされています。
根管治療後(特に奥歯)は詰め物の形態ではなくクラウンなどの被せ物を推奨しますが、これは歯を上から被覆することで薄くなった歯の強度を回復する目的があります。
根管治療後に抜歯になってしまう原因は歯根破折が最も多いという報告があります。
また、抜歯となってしまった歯の大部分は被せ物が装着されていなかったという報告や根管治療後に被せ物がされていない歯はされている歯に比べ歯を失うリスクが6倍高いという報告もあります。
個人的な印象でも根管治療後に割れてしまう歯はクラウンが装着されていない場合が多いと感じています。
被せ物のタイプ
クラウンは根管治療後に一般的に使用される被せ物の種類です。
クラウンの色は使用する材料によって変わります。
銀歯、セラミック系の白い材料、ゴールドなどが主に使用される材料ですが、それぞれに特色があります。
アンレーは噛み合わせの部分のみを被覆します。
クラウンに比べると歯を削る量が少ないメリットがありますが適応できる歯が限定されます。
まとめ
根管治療中はご不便をおかけし申し訳ありませんが、治療中のトラブルを防ぐ意味では治療している歯で噛まないことは大切なことです。
根管治療の間隔は御通院されている医院様の混雑状況にもよりますが、可能であればご都合を付けていただき週1回程度の御通院を推奨いたします。
また、通院間隔が空いてしまう場合にはその旨を治療前に担当医に伝えていただきより削れにくい仮封剤をしていただくなどの工夫も必要です。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。