日常診療をしていると、この歯の茶色の部分はむし歯ですか?とよく聞かれます。
一見茶色くむし歯のように見えても実はむし歯でないことも多いのです。
タバコのヤニやコーヒー、紅茶、赤ワインなどのステインが歯の表面や溝に着色すると
むし歯のように見えてしまいます。
また、以前に治療した材料が劣化したことによる変色や、歯と詰め物の隙間(ギャップ)
についてしまった汚れもむし歯のように見えてしまいます。
このような場合、まず着色をよく落とした後にもう一度確認させていただきます。
そして、以前の詰め物は新しく詰め直してあげるか、少し磨くことできれいになるようで
あれば、それはむし歯ではありません。
では、実際のむし歯はどのように見極めるのでしょうか??
むし歯を削るときに一番頼りにしているのは、見た目ではなく、
硬さとう蝕検知液の色です。
う蝕検知液とはむし歯に侵されて脱灰した(溶け出した)部分を染める薬液のことです。
どこまで細菌に感染されているかは目に見えないため、う蝕検知液がなかった時代は、
術者の手指の感覚で判断するしかなかったのですが、こうした液を使用することで、
どこまでむし歯が進んでいるのかを正確に判断する事が出来るようになりました。
ですので、歯が茶色いかどうかはあまり関係がありません。
う蝕治療ガイドライン(日本歯科保存学会参照)では、
う蝕の除去範囲(中程度の象牙質う蝕)・・・
『硬いう蝕象牙質は軟らかいう蝕象牙質に比べ細菌数が有意に少ない。
濃く着色したう蝕象牙質を除去すると、細菌感染のない「飴色」ないし「亜麻色」の
透明層となる。よって、鋭利なスプーンエキスカベータまたは低回転のラウンドバーを
用い、歯質の硬さや色を基準にしてう蝕象牙質を除去することが推奨される。』
となっています。
また、う蝕象牙質の除去にう蝕検知液を使用すべきか?については
『う蝕検知液を使用することにより、確実に感染歯質を除去し、
過剰切削を回避することができる。』となっています。
むし歯を取り残すと再発につながります。
また、削り過ぎは歯が薄くなり、弱くなる原因となります。
つまり、う蝕検知液を使いながら、軟らかいう蝕象牙質、濃く着色したう蝕象牙質を
徹底的に除去することで、虫歯の取り残しがなく、削りすぎもなくなるという事です。
染め出して、洗って、むし歯を取って・・・の行程を何度も繰り返しているな。
と感じられるかもしれませんが、
削りすぎずに確実にむし歯を取るため、さらには神経を守るためには絶対に欠かせない事
ですので、どうぞお付き合いください!
当院で使用しているう蝕検知液です。
ご興味のある方は是非ご覧下さい。